必見!天女座物語21

屋久島の縄文杉と、神隠しに遭った体験
日時 : 2000年12月17日 11:51
天女座を立ち上げる前にどうしても縄文杉に逢いたかったので、
思い切って計画。行きたい人は多かったですが、結局喜峰パパとトン
チャンと3人で行くことに・・・。

その前に私は、博多でフジコヘミングのピアノを聴いて感激!トン
チャンは、大阪でジェフベックを聴いて感激。全日空のマイレージで
無料航空券を貰って鹿児島へ。ひとつ打ち合わせを済ませて、そし
て、フェリーで屋久島へ。

12月14日に縄文杉の所まで出かけようと思い、4時に目覚ましを
かけたのはいいのですが雨!予定を変更して白谷雲水峡の2代杉を見
に行くことにしました。登山靴、食料、などを装備してレンタカーで
登山口まで行き、登り始めました。一歩足を踏み入れたとたん、そこ
は原始の世界。まるでジュラシックパークの映画の中を歩いているよ
うな感動。

杉に苔がむして、樹齢3000年の原生林。ムロという大きな穴があ
り、トトロの住処のような内部に抱かれると暖かくて・・・・。

感動した私たちは、15日は、雨でも絶対に縄文杉に会う!と固く決意。

12月15日、朝4時に目覚めると晴天。車で荒川別れまで行き、7
時にトロッコ軌道を歩き始めました。だんだんに明るくなって、遠足
気分でるんるんの3人。

しかし、トロッコ軌道は、何と片道8キロの遠距離。おまけに枕木が
ランダムで歩きづらいし、ところどころてすりも何もない、高い橋が
あり落ちたら一貫の終わり。その橋は、何と!霜でつるつる。そんな
危ない箇所が何カ所も・・・!

慎重に足を進めて何とかかんとかトロッコ軌道が終わった!と思いき
や、また山の迂回路の後、えんえんにこれでもかと続くレール。

「うんざりやなあ・・・。」10時くらいまで3時間歩いたところで
やっと縄文杉への登り口にたどり着きました。
しかし、そこは、全身フィールドアスレチックのようなハードな道。
木や株が、そこら中に生えている中を全身で登って行くのです。

喜峰パパもだんだん口数が少なくなり、3人とも黙々と登ります。

途中で帰る人と出会って「あとどのくらいですか?」「うーん。まだ
40分くらいあるねえ。」「えーっ!まだ、40分の登り!」

木の階段がつけてあるところもありますが、アップダウンの激しい
道。捻挫だけはしないように慎重に歩いて行きます。

足はだんだん重くなり、3人ともばらばらになりそうになります。
屋久島に住む友人のミロさんが、「絶対3人離れちゃ駄目だよ。神隠
しに遭うからね。」と忠告してくれていたにもかかわらず・・・。

やっとの思いで3時間かけて超ハードな急な山道を登って現れたのが
推定樹齢7200年の縄文杉!(最近は荒らされるので近くには行け
ないのです。展望台から見るだけですが・・・。)

何せ紀元前5000年から生きている、神様のような杉です。
縄文時代の遺跡や化石はありますが、生きているのですから!

それも根の回りが42メートル。直径5メートル。
その姿は、エネルギーに満ちあふれていて、頭には、勢いのある緑の
豊かな枝を頂いているのです。

「感動やねえ・・・。すごいねえ・・・。聖者に会ったくらいすごいねえ!」
3人とも圧倒されたままです。

この時点で1時。暗くなる前に下山しないとと昼食をとり、写真に納めま
した。

縄文杉に向かってマントラを唱えてご挨拶。「また来ます!」

その後、喜峰パパはかなり疲れがみえて遅れ気味。喜峰パパを待って
大分時間が過ぎていきました。

下山も険しい道が続き、一時も気を許せません。つまずいたら終わ
り。足でも挫いたら、大変です。
やっと4時頃、又トロッコ軌道に出て、「喜峰パパ、杉はもう飽き
たって!?」「見すぎや。」と冗談を言っているうちはよかったので
すが、何せ帰り道も8キロ。これからえんえんとレールを歩くのです。
(今でもトロッコは、時々、林業用には使われているらしいです)

他の登山客も皆、早々と帰ってしまし、3人だけが黙々と枕木を踏み
しめて歩きました。

休みたがる喜峰パパ、「縄文杉は冥土のみやげじゃ!」「暗くなると
駄目だから早く!冥土イン屋久島(笑)になっちゃうよ!」と元気付
けながら半分まで来た頃から暗くなって来ました。

幸い懐中電灯は、持っていたので足元の枕木を照らしながら「腹立つ
なあ!まだ続くのかなあ・・・。」
「もう夢に見そうやわ!」と言いながら・・・。

やっと学校跡にたどり着き「もうすぐよ!」

その学校跡から長い、てすりのない、吊り橋のような危ない橋を渡っ
たところで、「門が閉まっている!!」「登山客がいないと思って閉
めたのよ。」「越えられないかなあ?」「横に抜けられるわ!」

7時。そこを抜けてもうすぐ駐車場と思いきや、何とこれでもかこれ
でもかとトロッコ軌道が・・・・。
朝から12時間歩きづめ。

「どこまで続くのかなあ?おかしいよ。道間違えていない?」
「でもトロッコの線路をたどって歩いていたんだよ。他に2又になっ
ているところは、なかったよ。」
「さっきのところから1時間も歩いているよ!そんなになかった!」
「あの小学校跡の写真では、安房にトロッコで皆で買い出しに行った
と書いてあったけど、これって安房に続く道では?それだったら16
キロあるわ。もうそんなに歩けないわ。」

パニックの3人。しかし、喜峰パパは、足がよろけて危なっかしく
「リュックが重い!」と弱音気味なので私のリュックと交換。
そんな状態で又戻ることは無理。よろけて谷底に落ちたら取り返しが
つかない!

「このまま行くしかない!」
私が担いでいる喜峰パパのリュックに掴まってもらい、「もうすぐよ!」

地獄の行進。このまま永遠にトロッコ軌道を歩かされるのでは?とい
う変な錯覚に陥ってくる!

8時。2つのトンネル。何と!左は、行き止まりのサイン。
「あー!やっぱり間違えていた!」
もう一つ、右にトンネルがあってずっと奥まで続いているが、これを
行ってもし、行き止まりだったら・・・?

左の行き止まりは、大きな発電所のパイプ。谷底に発電所が見えるが
人影はない。「あそこまで降りたら誰かいるかなあ?」とトンチャン。
「でも、いなかったらこの急斜面を上がってくるのは無理よ!凄い距
離だもん!」と私。
「どうするかなあ・・・。遠くの下界に街の灯が・・・。余りに遠い!」

「携帯も圏外だし・・・。」と言いつついろいろ角度とか、場所を変
えているうち、かすかにつながるポイントを見つけてミロさんに電
話。「ミロさん、私たち、山で道に迷って・・・。」「来た方向に戻
ればいいんじゃない?」「喜峰パパが、もう歩けないって。今、大忠
岳にいるの。警察に電話してくれない?」「えっ!大忠岳????警
察!?わかった!すぐ電話する!」
最初は、のんびり話していたミロさんも事態がわかって慌てている様子。

そののち、屋久島警察から電話があったようで着信の下3桁が11
0。すぐ又、かすかにつながるポイントを見つけて電話。
「どこにおられますか?場所を確認して貰いたいのですが・・・。」
「発電所が下に見えます。そこの高台で・・・120号という印があ
ります。」「わかりました。営林署に確認して向かいます。時間がか
かると思いますが、動かないで下さい。」

しかし、待てども暮らせども救助隊は来ない。

又、携帯をかけて「まだですか?」
「そちらの場所が確認出来ないと連絡がありまして、救助隊は、下山
したようです。もっと詳しく場所を教えて下さい。」

何度も留守電に「もう一度場所を教えて下さい」と入っていたのです
が、何せ電波の入りが無茶苦茶悪いので、留守電をチェックすること
は不可能。

「近くに小さなボックスがあって、その中に非常電話があるよ!」と
トンチャン。営林署の方に電話。230という電話機にかかれた場所
の番号を警察に伝える。「今から向かいます!」

その場所は、遠くに海が見え、星が満天。下弦の月。「すごい!綺麗
ねえ!」寒さはしんしんと襲って来ていましたが、何とか持ちこたえ
るだけの重装備をして着込んでいたのが幸いして、救助隊が到着する
夜中12時まで4時間!!!!!!という長い時間を無事待つことが
出来ました。
消防隊員の方が6,7名。70キロの喜峰パパをタンカに乗せて担い
でトロッコ軌道を行くのは、かなり大変。

「トロッコを出して貰えませんか?」という消防隊の無線での要請
は、運転手がいないとのことで却下された模様。
ロープをタンカにくくりつけ、6人で喜峰パパを担ぎ上げ行進。

「あなたたちは歩けますね?」
うんざりですが、まさか私たちもタンカで・・・とは、言えないので
又トロッコ軌道を戻り始めました。足は、鉛のように重い!

ところどころ穴のような箇所があり、危険。気が抜けない。
消防隊員も時々、選手交代。喜峰パパの体重はこたえている様子!
申し訳ない!

「何で間違ったのですか?」と言われてもどこで間違えたのか記憶がない。

1時間かけてやっと!やっと!門にたどり着く。

何と!駐車場から延びているレールは、間違えた行き止まりのトロッ
コ軌道。人がよく間違えるので門を作って柵をして行かないようにし
たそうで、私たちが「閉められた!」と思った門は、実は、行かない
ように作った門だったのです。

「どうやって乗り越えたのですか?」「横から抜けました。」

見ると、門とは反対側の別のレールから100メートルの所に駐車場
が・・・。

トロッコ軌道は、危ないので足元ばかり照らしていたので目の前の標
識に気がつかなかったのです。「これ絶対間違えますよ!」と私。

明るければ絶対間違えるはずのないところですが、レールが道なりに
延びていたので間違っていることすら気がつかなかったのです!

「しかし、無事でよかったですよ!ちゃんと登山の用意で着込んでい
たのがよかったですね。」と消防隊員。
「よく亡くなったり、行方不明になるんですよ。」
「神隠しですか?」
消防署の人は、「神隠しです。」とは言わなかったけれど・・・。

ミロさんに聞いた話で3日間行方不明になった人が見つかって「夜は
どうしていたんですか?」という質問に対し、「夜はなかった!」
ずっと昼間のように明るかったそうです!
屋久島は神の島。何があってもおかしくない。

喜峰パパは、足は疲れているものの元気でしたが念のため救急車で病
院に・・・。病院も遠かったので着いたのが、午前2時。
肝臓が心配なので点滴。他は異常なしなのですが、「点滴に2時間か
かりますから付き添って下さい。」
「2時間!???」

2時間というと朝の4時まで待てるほどトンチャンも私も体力の限
界!無理。喜峰パパを病院で泊めて貰うことにして看護婦さんに後を
頼み込んで宿に帰りました。親を残していくのか?と思われたでしょ
うが、私たちも相当に消耗していたのでこれ以上待つことは出来ませ
んでした。
心配して起きて待っていてくれた晴耕雨読という民宿のご主人が沸か
してくれたお風呂の有り難かったこと。

翌日帰って来た喜峰パパは、人が変わったように元気!
「看護婦が2時間の点滴の間、よう話を聞いてくれてのう・・・。」
全く!昨日は、弱気だった癖に!このはしゃぎよう!

「誰のお陰で遭難しそうになったと思ってるんやろなあ・・・。」と
2人でぶつぶつ。全く!「話せば元気になる奴やなあ!」

しかし、警察や消防の方や、お医者さん、看護婦さん、民宿のマス
ターやミロさん、皆さんに親切にしていただきました。深謝!

良い教訓になりました。山はなめたらいかん!
懐中電灯や携帯電話、ホカロンなど持っていたからよかったようです。

20キロのトロッコ軌道と往復4時間のハードな山道。
13時間、のべ30キロくらい?歩いたのです!私の大根足もすごい奴!

神隠しかもしれないけれど、何となく守られている感じがずっとして
いました。貴重な体験でした。
神様、無事に返して下さって有り難うございました。

縄文杉のエネルギッシュな姿は、心にくっきりと残りました。いつで
も勇気を与えてくれそうです。

屋久島は、すごいところです。
7200年間という気の遠くなるすべての歴史を見てきた杉。
皆さんも縄文杉に一度は逢ってみて欲しいです。

ただし、登山の準備は念入りに!

熊野に帰る電車の中で、あの時と同じ下弦の月が・・・。
「月を見たとき救われたよねえ・・・。」


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は、こちらへ    
       http://www2s.biglobe.ne.jp/~shihorin/
「海の見える音楽ホール」天女座は、来春オープンに向けて改装にか
かります。
100畳の畳のホール&海の見える大正ロマンのカフェ!
又、出来ましたらお知らせいたします。



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